第77回東京矯正歯科学会学術大会で座長を務めました。
平成30年7月12日木曜日に有楽町朝日ホール(有楽町マリオン11F)で開催された大77回東京矯正歯科学会学術大会で二つの演題の座長を務めました。東京矯正歯科学会は日本で最大の矯正歯科学会である日本矯正歯科学会の関東地方会といった存在です。一つ目は“包括的治療を施行した上顎後退症を伴うKabuki症候群の1例”です。歌舞伎症候群は1981年に二人の日本人医師により報告された32,000人に1人という稀な遺伝性疾患で、特徴である切れ長の目が歌舞伎の隈取に似ているところからその名がつけられたそうです。歌舞伎症候群の3人に1人が不正咬合を示すといわれ、つまり10万人に1人が矯正治療の対象となると思われます。現在53の症候群などに伴う不正咬合の矯正治療は指定医療機関では保険診療となり(日本矯正歯科学会ホームページの“矯正歯科診療が保険診療の適用となる場合とは”をご覧ください。)歌舞伎症候群も含まれます。重度の不正咬合に加え精神発達遅滞からコミュニケーションをとることが難しく、治療は困難を極めることが多いようです。PubMedで歌舞伎症候群の矯正治療を検索すると2018年1月にポーランドから出た論文1編しかヒットせず、やはり歌舞伎症候群の矯正治療経過の報告は非常に稀なのでまとめ上げて論文発表してほしいところです。
二つ目は“音声分析による咽頭扁桃肥大の非侵襲的スクリーニング法の検討”です。鼻閉等による日常的な開口あるいは口呼吸は不正咬合の原因であるばかりでなく治療の進行の妨げとなったりします。そのため矯正医としてはそのような患者さんは専門医に依頼して鼻呼吸できるようにしてもらうことが必要です。一方そのような患者さんが日常の歯科診療の中で見つけられれば、またなるべく早めに不正の芽を摘み取りたいということから患者さんに負担の少ない方法でのスクリーングは意味のある所と思われます。今回の発表では咽頭扁桃肥大の小児10名と正常小児11名の比較で数は少ないのですがスクリーニングによる偽陰性はゼロでした。今後検査者の数を増やしても特異度が高ければよい検査と言えるかもしれません。誰でも痛い検査は嫌ですが音声分析なら全然大丈夫ですし。
私の担当は午後の演題2題でした。でも仕事はそれだけではなく、10:00から16:10までの13演題を7名の委員+会長の8名で採点して優秀賞を決めなければなりません。そのため朝からすべての演題を聞いて終了後の会議で採点し、17:00頃まで拘束となりました。ならば日当は結構もらったのでは?と思われるかもしれませんがゼロです。うーん、お弁当、せめてお茶の一杯あっても、と思ってしまう私は俗人ですかね。
2018年07月20日 16:32